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素樹さんという作家がいまして、この方の、エッセイというか旅行記に今、ハマっています。

きっかけは、旅旅オートバイという本からなのですが、これは、素樹さんがこれからの人生どう生きていこうか…と思いあぐねて、ある日、住んでいたアパートを引き払い、荷物も整理して、必要最低限のキャンプ道具をHONDAのGB400に積み、当ても無く放浪する、1年くらいの間の出来事を綴ったものです。

この中の一説で、大好きな話がありまして、どこかの山奥の無料の露天風呂が、そばにある、キャンプ地で、ある年配の男性と出会ったときの話です。

男性は素樹さんが露天風呂に浸かったまま外向きでタバコを吸っていると、「ちょっと、お湯の温度が低いね」と話しかけてきた。すぐに、自分に言っているのだな、とわかった素樹さんは「ええ、でもあまり、温度が高いと長湯できませんから」振り返りながらそういった。

見た瞬間に、ああ、この人は使われてないな、そう思ったそうです。つまり、仕事や、お金や、時間に使われていない。使われている人は顔に出るそうです。一度何かに妥協してしまうと、どんどん妥協の幅が広がり、しまいにはこんがらがった毛玉のようになって、いったいどこが核だったのかわからなくなる。


要するに、2種類の人間がいるとしたら、やらなきゃいけないことをしている人か、やりたいことをしている人か、ということになるそうです。


結構いい年恰好ではあるが、年齢不詳、長い髪を後ろで束ね、もみ上げには白髪が混じっている。お湯の上から見える上半身は、程よく引き締まっている…といっても肉体労働のそれとは、異質な筋肉のつきかた。

男も普段は日に50本くらいはタバコを吸っているそうだが、旅に出る間は、やめているとのことだった。
「バイクで来たのかい、あそこに停まっているの、君のだろう?あれは750?」
「いえ、400です。」「長距離走るのに400ではパワー不足じゃないか?」
「ええ、でもあまり大きいと取り回しがしづらいから」

男は顔をふきながら、大きく頷いた。「僕も昔はオートバイが大好きでね、よく友達とそのバイクの音だけで車種を言い当てるゲームをしたんだ、たいていは当たっていたんだけど…あれはBSAの古いやつ?」「いえ、HONDAです。」

そんなやりとりをしたあと、キャンプ場内にある、今は使われていない管理施設で飲もうという話になった。

今は使われていない施設のため、勿論電気も水道も止まっていたが、最近まで使われていた場所らしく、おあつらえむきの畳部屋があったそうだ。

男は小ぶりのランタンとクーラーボックスに満タンの酒を、自分のキャンピングカーから持ってきた。

酒の酔いもあって、男は饒舌に自分のことを語り始めた。

名古屋でレース専門のチューニングショップを普段はしているようである。

「今は4輪に転向したがね、若い頃は2輪が大好きで、レース参戦もして、GPライダーになるのが夢だったんだ。そのきっかけになったのはBS350っていうバイクなんだけど、知ってるかなぁ?ブリジストンが当時作っていたバイクさ」

学生時代に、北海道の親類の家に泊まりに行った男は、昼間することもなく、街をほっつき歩いているうちに札幌で小さいバイク屋を見つけた。何の気なしに中にはいると、自転車の修理なんかもやっているような店で、取り立ててすごい店という印象はなかったそうだ。すぐに帰ろうと思ったが、一番奥に置いてあるシートカバーのかかったバイクの、リア部分のシートがめくれていたのが目に入った…男の目はそのバイクに釘付けになった…なぜなら、その形状は今まで、男の頭の中にあるどのバイクでもなかったからだ。恐る恐るシートをめくると、BS350の文字が目に入った…これは確か、雑誌で1度だけ見たことがある輸出専門のバイクで、日本にあるとすれば逆輸入車しか存在しないバイク…

当時のレートを考えれば、逆輸入車がいくらで売買されていたのか想像もつかない。男はその場から動けなくなってしまった。

どうしても、跨ってみたい…欲求に耐えかね、店の白髪頭の親父に「あの、これ跨ってもいいですか?」と聞くと、それまで、客のいることすら無視して、仕事をしていた親父が、手を止めて一瞥すると、「だめだ、売り物じゃねえから」と返事を返してきた。
しかし、そのバイクにどうしても触れてみたい欲求が強かったため、2週間の滞在予定だったが、毎日そのバイク屋に通った。

常連と話すうちに、そのバイクの持ち主は愛知県に住んでいて、相当な資産家…古くからの親父の知り合いで、修理といえば、必ずそのバイク屋に持ち込まれる、ということがわかった。しかもタイミングのいいことに、その修理のあがったバイクを、陸送するはずのバイトが都合が悪くなり、陸送の手段を模索しているということもわかった。
ダメモトで、自分にやらせてもらえないか、と名乗り出ると、あっさりOKの返事が出た。

陸送中の運転の仕方、回転数はギアごとに決められ、それを超えてはならないことなどの注意を受け、いざ出発前夜は興奮してろくに眠れなかったという。
この親父はどこか職人気質で気難しいが言ってることは、正確なことだった。もう一人の若い従業員はどこかいいかげんさがあった。

ある日バイクを引き取りに来た客が帰ろうとすると、慌ててそれをとめ、奥に入っていってゴム製のリングを持ってきた、ブレーキホースに付け忘れていたため、フレームからホースが離れブラブラしていたのだそうだ。それをリングで固定し、客は帰った。
たったそれだけのことだったが、それだけで、その親父を男は信用したという。

バイクのキャリアに小さな荷物をくくりつけ、運転してみると、今まで乗ったどんなバイクよりもすばらしく、非常に楽しい陸送だった。信号待ちの時には道行く若者から痛いほどの視線を浴び、時折勝負を挑まれることもあったが、勿論負け知らずだった。

陸送先は大きなお屋敷とも言えるほどの邸宅で、そこの主人はオートバイが趣味で、車庫には、BMW、ハーレー、BSA、ノートンなどの名だたる名車がずらりと並び、趣味でバイクチームをやっているのだが、良かったら走ってみないか、と誘われ、男は休日になるとサーキットで練習を積んだ。才能があったのか、国内のレースでは勝ち続けた。

だが…急に男の口が重たくなった。どうやら、これ以上は、言いたくない思い出のようだ。

ライバルとも言うべき、同世代の友達がレースで死んだ、それをきっかけに、男はバイクを降りてしまった。

その後は4輪に転向し、今にいたるそうだが、最近は景気が悪く、スポンサーがつかないので、レース活動は一時中断している。
「なんせ、金がかかる」「そんなにかかるんですか?」
「かかるなんてもんじゃない、1秒を縮めるために、何千万という金がかかる。おかげで最近は金持ちのぼんぼんばかりだ」

だが、そんなスポンサー探しにもめどが立ち、来年はようやくレースに復帰できそうだという。
「そんな大変な思いをしてまで、やりたいもんですか?」
「ああ、でも、楽しいから」そういって、男は満面の笑みをたたえた。

次の日、男は白い犬を連れて、見送りにきてくれた。
「気をつけてな」
「とても楽しかったです」

出発してから、名前を聞くのを忘れた、と思ったそうだ。


とっても、いい話で、僕はこのレースショップの男の人に、とてもシンパシーを感じてしまい、読んだ後、鳥肌がたちました。

それと北海道のバイク屋の親父もいいっすねぇ…些細な部分に整備に対する信用度ってありますよ。僕もこの手の整備する人は徹底的に信用しちゃいます。

旅に行きたいなぁ、旅行ではなく旅ですよ。




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